周辺幻

沖の監視

スピッツドラフト会議2023(前半)

ルール
スピッツが発売したオリジナルアルバム17枚+スペシャルアルバム2枚(『色々衣』『花鳥風月+』の中から、曲を指名・獲得し、全19曲の魅力的なアルバムをつくる
・曲の指名競争は、同じアルバム内から行われる。まずは、1stアルバム『スピッツ収録の12曲より参加者は曲を指名し、競合があれば抽選する。スピッツ』の獲得曲が定まったら、次は2ndアルバム『名前をつけてやる』の指名に進み、次は3rd~という流れで発売順に曲を定めていく。
NPB主催の一般的なドラフト会議では、ドラフト一巡目は指名競合すると抽選となり、二巡目以降はウェーバー制(ウェーバー制とは、最下位球団から順に選手を指名できるシステム)が適用されるが本ドラフト会議ではウェーバー制又は逆ウェーバー制を適用しない。アルバムごとに指名、重複したら抽選を行い、これを計19回繰り返す。要は、ドラフト1巡目の指名を19回やっているのと同じである。

使用ツール
https://online-draft.vercel.app/(オンラインドラフト会議)
えんぴつ(参加者の氏名を書いている。抽選用)

参加者
1,むる猫BOY
…ブログの書き手。小学生の時からスピッツを聴き始め、気が付けば25年の会社員。
 参加者の中で最もスピッツを聴いているはず。
 好きなアルバムは『スピッツ』。

2, PIPPI CHANCE(ぴっぴ)
サザンオールスターズショパンを愛する女性。現代詩の選考委員をやっている。
 スピッツも幼少期より聞いていたが、聞き込んだアルバムと全く聞いていないアルバムがある。
 参加者の中では「スピッツ初心者」に位置する。
 好きなアルバムは『三日月ロック』 

3, S氏
…京大出身の頭脳明晰なスピッツ・ファン。
 ロックに留まらず幅広く音楽をたしなみ、某有名研究機関で生物学の研究をしている。今回リモート参加。好きなアルバムは『ハチミツ』。

表記
・アルバム名は『』、楽曲名は「」で記述した。
・楽曲情報は公式サイト(https://spitz-web.com/discography/category/album/)より引用。


スピッツドラフト会議 開演
(20:00~)

1st Album『スピッツ
発売日:1991/03/25
収録曲
01. ニノウデの世界
02. 海とピンク
03. ビー玉
04. 五千光年の夢
05. 月に帰る
06. テレビ
07. タンポポ
08. 死神の岬へ
09. トンビ飛べなかった
10. 夏の魔物
11. うめぼし
12. ヒバリのこころ

■指名
むる猫BOY→テレビ
ぴっぴ→月に帰る
S氏→夏の魔物

ルールを基に始めたものの、参加者は皆初めてドラフトに臨むため、まだ「おそるおそる」の雰囲気。
私(ムル猫BOY)の初指名は、「テレビ」。
この時点では、方針らしきものはほとんど確立していない。
ただ、全19曲の壮大なアルバムとなるため、
アルバムとしての聞かせどころをつくること、そして代えが効かないような曲は早めにほしいな~と思っていた。

スピッツ初心者、ぴっぴ氏は「月に帰る」を指名。周りから「おぉ~」という歓声が上がった気もする。
長いアルバムの中で、方向性を変えたり、起点となったり、いろいろなことが出来そうな曲。
アルバムが物語性を獲得しうる、そんな気配が満ちている。

頭脳明晰なS氏は「夏の魔物」を指名。
非常に固い手。うら寂しさ、疾走感、バンドサウンドの一体感を備えて曲単位のパワーがあるし、物語性もある。
アルバム内の音楽的ピークをつくる起爆装置としても、ピーク後の余韻が残るなかに配置しても面白い。

競合は無く、3人とも単独指名に成功。
この時点では、まだ方法論が全くない状態なので、皆頭に「?」が浮かんでいるようなふわふわとした雰囲気。
思えばこのころは平和だった。


2nd Album『名前をつけてやる』
発売日:1991/11/25
収録曲
01. ウサギのバイク
02. 日曜日
03. 名前をつけてやる
04. 鈴虫を飼う
05. ミーコとギター
06. プール
07. 胸に咲いた黄色い花
08. 待ちあわせ
09. あわ
10. 恋のうた
11. 魔女旅に出る

■指名
むる猫BOY→待ち合わせ
ぴっぴ→プール
S氏→魔女旅に出る

1曲目の指名が終わり、どことなく各人がその楽曲との相性や親和性みたいなものを、手探りの中考慮して指名する。

私は「テレビ」のインパクトに負けないよう、異世界に突入したようなギターイントロが印象的な短いビートパンク・ナンバー「待ち合わせ」をチョイス。

ぴっぴ氏はギター・ベース・ドラム・ボーカルが完璧に調和した名曲「プール」で世界観を構築し、
S氏は藤井聡太竜王も大好きな、アルバムのラストを飾る『魔女旅に出る』を『夏の魔物』とかぶせ(?)"魔"閥指名する。


3rd Album『惑星のかけら』
発売日:1992/09/26
収録曲
01. 惑星(ほし)のかけら
02. ハニーハニー
03. 僕の天使マリ
04. オーバードライブ
05. アパート
06. シュラフ
07. 白い炎
08. 波のり
09. 日なたの窓に憧れて
10. ローランダー、空へ
11. リコシェ

■指名
むる猫BOY→惑星のかけら
ぴっぴ→ローランダー、空へ
S氏→僕の天使マリ

スピッツが一般的な知名度を獲得する前のいわゆる初期三部作の指名が完結。

私は常々、本作収録の「アパート」をマイ・フェイバリットとして挙げ、図らずとも指名を公言し、他者を牽制するかのような形を取ってしまっていたが、
蓋を開ければ誰も「アパート」を指名していない。こんなところにも「好きな曲の寄せ集めではなく一つのアルバムをつくる」というドラフトの本懐が見て取れる。

ぴっぴ氏は、およそ初心者とは思えない「ローランダー、空へ」の指名。荒廃した世界で理想郷が脳裏をかすめるような、せつないバラードロックで「月に帰る」との相性もよさそうだ。

S氏はカントリー調の軽快な佳曲「僕の天使マリ」を指名し、魔女の次は天使を収集していく。私はタイトルナンバー「惑星のかけら」を無事獲得。アルバムの一つの山場として配置する予定である。


4th Album『Crispy!』
発売日:1993/09/26
収録曲
01. クリスピー
02. 夏が終わる
03. 裸のままで
04. 君が思い出になる前に
05. ドルフィン・ラヴ
06. 夢じゃない
07. 君だけを
08. タイムトラベラー
09. 多摩川
10. 黒い翼

■指名
むる猫BOY→夢じゃない→君だけを
ぴっぴ→夢じゃない
S氏→タイムトラベラー

スピッツがはじめて商業的な成功を意識したとされる4thアルバム「クリスピー」で、はじめての競合!
結果、えんぴつ転がし抽選により、ぴっぴ氏が獲得。

『夢じゃない』の重複は、スピッツ好き芸能人でお馴染みのハライチ・岩井勇気氏が先日ラジオで結婚を報告し、そのラジオに岩井氏の母親が初めてリクエストした曲が『夢じゃない』であったことから、
その話題と共に参加者全員が近々で聴いていた、という事情もあるかもしれない。

抽選に敗れた私は代替案として『君だけを』を指名。

5th Album『空の飛び方』
発売日:1994/09/21
収録曲
01. たまご
02. スパイダー
03. 空も飛べるはず(Album Version)
04. 迷子の兵隊
05. 恋は夕暮れ
06. 不死身のビーナス
07. ラズベリー
08. ヘチマの花
09. ベビーフェイス(Album Version)
10. 青い車(Album Version)
11. サンシャイン

■指名
むる猫BOY→迷子の兵隊→ヘチマの花
ぴっぴ→迷子の兵隊
S氏→たまご

連続で指名競合。えんぴつ抽選のうえ、またもや、ぴっぴ氏が『迷子の兵隊』を獲得。
氏曰く「迷子なのに、いきなりイントロなしで歌い出すところに魅力を感じる」。

この「迷子の兵隊」は自分の中では代えがたい曲で、非常に悔しかった。
何となく、「テレビ」を初っ端に獲得し、それこそチャンネルをチャカチャカ変えるようなイメージで、
奇妙なロックが入れ替わり立ち代わり現れるアルバムにしようかなと考え始めていたから、待ったなしで動き始める本曲はぴったりだったのだ。

迷った挙句、あえて対照的な寺本りえ子氏とのデュエット曲「ヘチマの花」を指名する。奇妙なロックたちの間に挟み込み、
混沌の中で聞き手を安心させるオアシスのような時間をつくろうという考えからだ。

S氏は、独自路線的にミドル~中早テンポの煌めいた楽曲を容赦なく乱獲し、色で言えば暖色系で固めている印象。おそらく後半に冷たい色味・反対色、あるいは無色めいた楽曲を指名するのでは?と推測する。
ぴっぴ氏のチョイスは、多岐にわたっていて、その上で過去・現在・未来の時間軸を意識しているようなところもあり不気味である。

6th Album『ハチミツ』
発売日:1995/09/20
収録曲
01. ハチミツ
02. 涙がキラリ☆
03. 歩き出せ、クローバー
04. ルナルナ
05. 愛のことば
06. トンガリ'95
07. あじさい通り
08. ロビンソン
09. Y
10. グラスホッパー
11. 君と暮らせたら

■指名
むる猫BOY→トンガリ'95
ぴっぴ→Y
S氏→愛のことば

二回抽選を外したむる猫BOYこと私は、本来の?趣旨を思い出そうと、
手帳に「奇妙 & Cool」なぞと書き込み、それを踏まえて「トンガリ'95」を指名する。
ドイツ語でSpitzは”尖った”の意であり、「トンガリ'95」=スピッツのテーマソング的立ち位置だと認識している。
ただ、もしも「迷子の兵隊」を獲得できていれば、「ロビンソン」を指名したかもしれない。
「迷子の兵隊」も「トンガリ'95」もサビのリフレインが印象的で、ダブるので。

ぴっぴ氏は、まるで夢の中にいるような幻想的なナンバー「Y」を獲得。彼女は兼ねてより「Y」好きを公言していたので、
なんだか囲い込みに近いものもある。S氏は、名曲「愛のことば」で楽曲的な煌めきはそのままに、やや陰りを入れ、チームの質を上げてくる。
この辺で、「単純に好きな楽曲を入れるのも大事だよね」とぴっぴ氏。確かにそうだ。

んで書いてて初めて知ったんですけど、3~6枚目は、ほぼほぼ同じ時期(9月後半)に1年置きでアルバムをリリースしているんですね。
すごいペースだ。しかもどんどん楽曲の質が上がっている。商業的な成功もおさめ、草野さんの手がが止まらない時期なんだろうなあ。


7th Album『インディゴ地平線
発売日:1996/10/23
収録曲
01. 花泥棒
02. 初恋クレイジー
03. インディゴ地平線
04. 渚
05. ハヤテ
06. ナナヘの気持ち
07. 虹を越えて
08. バニーガール
09. ほうき星
10. マフラーマン
11. 夕陽が笑う、君も笑う
12. チェリー

■指名
むる猫BOY→マフラーマン
ぴっぴ→インディゴ地平線
S氏→バニーガール

ぴっぴ氏は、本アルバムを通して聴いたことがなく、曲をその場で聴きながらドラフトに臨む。
その限られた時間の中で、力強い静けさを持つタイトルナンバー「インディゴ地平線」を獲得したのは敵ながらあっぱれ。

S氏は、死をまとわせつつ疾走する「バニーガール」で煌めきをさらに強化しつつ、魔女・天使・コスプレイヤーと幻獣図鑑の更新にいそしむ。
ここで、「初恋クレイジー」など選んだらお里が知れるな、とかなり生意気なことを思っていたのだが、彼はそうはしなかった。

私は、単独指名確実と思われる「マフラーマン」を指名。(ぴっぴ氏はこの曲を知らないし、S氏の指名傾向と異なるから)テレビに映し出されるスピッツ的戦隊ヒーローだ。
遠くに見える地平線からバイクで駆けつけてきたかのようなクレッシェンドのイントロもドラマ性を感じるし、是非とも欲しかった一曲。

8th Album『フェイクファー』
発売日:1998/03/25
収録曲
01. エトランゼ
02. センチメンタル
03. 冷たい頬
04. 運命の人(Album Version)
05. 仲良し
06. 楓
07. スーパーノヴァ
08. ただ春を待つ
09. 謝々!
10. ウィリー
11. スカーレット(Album Mix)
12. フェイクファー

■指名
むる猫BOY→エトランゼ
ぴっぴ→スーパーノヴァ
S氏→仲良し

ぴっぴ氏指名の「スーパーノヴァ」って、なんかAKIRAの世界観を連想するんですよね。
それもあってチーム全体からSFチックな印象を受ける。うまくいけばガラス細工のように精巧な美を放ちそうだけど、
少し間違えると崩れる可能性もある。その諸刃の剣感が魅力的である。

S氏の指名は、スタバのフラペチーノに角砂糖をぶち込むような振り切り方で、それはそれで好感を持ち始めた。
バーチャル・リアリティーの如き理想郷でずぶずぶ溺れていくようなアルバムになりそうだが、
溺れた先にどうなるのか、夢の中で夢を見るような無限回郎に誘ってゆくのか、息継ぎのため水中から岸辺に上がらせるのか、あるいは。

9th Album『ハヤブサ
収録曲
01. 今
02. 放浪カモメはどこまでも(album mix)
03. いろは
04. さらばユニヴァース
05. 甘い手
06. Holiday
07. 8823
08. 宇宙虫
09. ハートが帰らない
10. ホタル
11. メモリーズ・カスタム
12. 俺の赤い星
13. ジュテーム?
14. アカネ

■指名
むる猫BOY→8823
ぴっぴ→アカネ
S氏→ホタル

楽曲のマスタリング作業をアメリカで行った鋭利なサウンドが刺激的な本作から、私はタイトル・ナンバー『8823』(ハヤブサを指名。
この単独指名はデカすぎる。ヘンテコ・ロックを集めていたが、やはりアルバムにおいて「聴かせどころ」が欲しい。
『空の飛び方』あたりに指名から、8823に目をつけていたので、かなりうれしかった。

ぴっぴ氏は、初期から中期へ移行する象徴のようなナンバーと評しつつ「アカネ」を指名。

S氏は、ぴっぴ氏お気に入りの「ホタル」に競合覚悟で特攻し、結果こちらも単独指名。
このあたりで、チームの方向性が一気に明るみになる。


10th Album『三日月ロック』
発売日:2002/09/11
収録曲
01. 夜を駆ける
02. 水色の街
03. さわって・変わって
04. ミカンズのテーマ
05. ババロア
06. ローテク・ロマンティカ
07. ハネモノ
08. 海を見に行こう
09. エスカルゴ
10. 遥か(album mix)
11. ガーベラ
12. 旅の途中
13. けもの道

■指名
むる猫BOY→ババロア→ローテク・ロマンティカ
ぴっぴ→ババロア
S氏→さわって・変わって

このあたりで自分が思ったのは、「夜」とか「海」とか情景が浮かぶような単語がタイトルに入っていると、
アルバム全体のムードががらっと変わってしまうということ。
だから、「夜を駆ける」「海へ見に行こう」は楽曲的には唯一無二のものがあるし入れたかったが、避けるほかなかった。
あの「夜を駆ける」に誰もタッチしなかったのは、そんな理由なんじゃないかなあと思います。

だから私は珍しく打ち込みが使用され、無機質な印象も持つ「ババロア」も欲しかったんだけど、どっちみち、ぴっぴ氏に獲られていました。
色々と悩んだ末に、性格は違えど「ババロア」の同期(?)のような「ローテク・ロマンティカ」を指名する。
こちらの方が、スケールは小さいけど、ミニマムできびきびと動き回れるし、自軍には合っていると判断。

S氏は、「さわって・変わって」を、被ることなく、のびのびと指名。
しかし、のちに判明するのですがこの曲をキー・プレーヤーとして考えていたらしく、一安心していたとの旨。

 

〜後半へ続く〜