周辺幻

沖の監視

2023-01-01から1年間の記事一覧

【短編小説】嘔吐2023

漫才を見ると吐く女は、僕と暮らし始めるまでお笑いをまともに見てこなかった。ダウンタウンも、明石家さんまも、タモリも知らなかった。 特に何があったわけではない。厳格な家庭に育ちバラエティを一切見せてもらえなかったからとか、西のお笑い文化を一切…

もしボードレールがパンクロック歌手だったなら

めっちゃムカつく。なんにも分かってない、客も、偉そうな評論家共も。バンドの奴らも。 そもそも、いろんなことから解放されたくて音楽やってんのに、ノリとか韻律とか、そんなこまけーことに拘泥しやがって。テクに溺れて。練習時間や成果を観客に嗅ぎ取っ…

スピッツドラフト会議2023(後半)

Special Album『色色衣』収録曲01. スターゲイザー02. ハイファイ・ローファイ(NEW MIX)03. 稲穂(NEW MIX)04. 魚05. ムーンライト06. メモリーズ07. 青春生き残りゲーム(NEW MIX)08. SUGINAMI MELODY09. 船乗り10. 春夏ロケット11. 孫悟空12. 大宮サンセット…

スピッツドラフト会議2023(前半)

ルール・スピッツが発売したオリジナルアルバム17枚+スペシャルアルバム2枚(『色々衣』『花鳥風月+』の中から、曲を指名・獲得し、全19曲の魅力的なアルバムをつくる・曲の指名競争は、同じアルバム内から行われる。まずは、1stアルバム『スピッツ』…

The World Upside Down(ディズニー映画『ノートルダムの鐘』について)

映画の中で登場人物たちが歌い踊り始めると気分が悪くなる。 思いの丈を歌や踊りで表現され、「World is beautiful」みたいな顔をされると、どうにもげんなりしてしまう。美しい男女や可愛らしい小動物や、目玉をつけたカップやソーサラーが歌い踊り始めると…

スピッツ『ひみつスタジオ』

2023/05/17 仕事をして、すべてが馬鹿らしくもう生産性や人間関係なんてどうでもいいな、と思いながら 合間合間に、何かの抜け道のように、スピッツの新譜「ひみつスタジオ」を聴いていた。 朝の通勤時にカーステで、昼休みに業務端末のイヤホンで、会議中に…

思い出に浸るのがやめられない

ケイト・エリザベス・ラッセルの『ダーク・ヴァネッサ』という小説を読んだ。いったいどんな話?と訊かれたら、寄宿学校の生徒と教師が、恋に落ちる話!と答えてしまいそうにもなるが、それは全くの、全くの間違いで、実際は、十五歳の赤毛の女の子と四十二…

成長したくない 『学びを結果に変えるアウトプット大全』樺沢紫苑

学びを結果に変える、そうタイトルに書いているにもかかわらず、この本を手に取って、読んで、今もやもやした気持ちでいるのは、自分が「成長」とか「結果」とか「成功」という言葉に嫌悪感を抱いているからだ。アウトプットが手段ならば、その目的である「…

『OUT』

登場人物それぞれの視点から物語が語られていくので、どの人物にも感情移入してしまう。雅子のきびきびとしたものの言い方は、歯切れが良くて頭が切れて気持ちがいいけど、近寄り難さを周囲に与える。彼女からは、誰をも信頼していないことが伝わってくる。…